なぜあなたの会社はメディアで取り上げられないのか

「うちも、新聞やテレビに取り上げてもらえたら」

そう考えたことのある経営者は、少なくないと思います。地域での認知が広がり、信頼の証にもなる。プレスリリースを出してみた、という方もいるかもしれません。

けれど、たいていは反応がありません。

なぜでしょうか。商品が地味だから。会社が小さいから。そう思いがちですが、どうやら理由は別のところにあるようです。

取り上げられない会社の、共通点

プレスリリースを出す会社の多くは、こう書きます。

「新商品を発売しました」 「創業◯周年を迎えました」 「新しいサービスを始めました」

どれも事実で、その会社にとっては大切な出来事です。けれど、受け取る側――記者やメディアの立場で読むと、ある共通点が見えてきます。

どれも「自社」の話なのです。

自社が何を始めたか。自社が何を達成したか。視線が、ぜんぶ自分の会社の内側を向いている。

一方で、メディアが取り上げたくなる会社は、向いている方向が違います。視線が、外を向いている。社会や、世の中や、誰かの役に立つことのほうを向いている。

この差は、小さく見えて、決定的です。

記者が本当に見ているもの

少し、立場を入れ替えてみます。

記者は毎日、たくさんの情報の中から「記事になるもの」を探しています。そのとき記者が見ているのは、実は「その会社がすごいかどうか」ではありません。

記者が見ているのは、「これは、読者の関心ごととつながっているか」です。

今、世の中が気にしていること。季節の話題。社会の変化。そこに接続できる出来事なら、記事になる。逆に、どれだけ立派な取り組みでも、社会の関心と接続していなければ、「よい話ですね」で終わってしまう。

メディアは、あなたの会社に興味があるのではありません。社会の関心に興味があって、その入り口として、たまたまあなたの会社が使えるかどうかを見ている。

身も蓋もない言い方ですが、ここを取り違えると、何度プレスリリースを出しても届きません。

「自社の自慢」を、「社会との接点」に変える

実は、私自身にも心当たりがあります。

電話とファックスが中心だった受注業務を、LINEに切り替えたことがあります。これが、地元紙の連載で取り上げられました。記者の方の関心は、「DXという言葉は聞くけれど、自社の業務にどう落とせばいいか分からない」という読者に向けて、具体的な実例を探していた、ということです。私の取り組みは、その「実例」として選ばれました。

つまり、取り上げられたのは、私の取り組みが特別すごかったからではなく、世の中が「DX」に関心を向けていて、私の業務改善が、たまたまその社会の関心と地続きだったから。自分では「自社の話」だと思っていたものが、外から見ると「社会の話題の入り口」になっていた。そのことに、私はあとから気づきました。

ここで大切なのは、嘘をついたり、話を盛ったりすることではありません。

やることは一つ。自社の取り組みを、「自分たちの話」としてではなく、「社会の関心とどこで交わるか」という視点で見直すことです。

同じ取り組みでも、「うちはこんなに頑張っています」と差し出せば、自社の自慢で終わる。「今、世の中が気にしているこのことに、うちはこう向き合っています」と差し出せば、社会の話題になる。

事実は変えなくていい。変えるのは、どこを向いて語るか、だけです。

視線の向きが、すべてを決める

ここまで、メディアの話をしてきました。

けれど――実はこれは、メディアだけの話ではないのかもしれません。

商品が売れることも、人が集まることも、たいていは「相手が何を求めているか」から始まります。自社の都合を語る会社より、相手の関心を見ている会社のほうに、人は集まる。

最後に、一つだけ問いを置いて、終わりにします。

あなたの会社の取り組みは、「自社の話」になっていますか。それとも、「誰かの役に立つ話」になっていますか。

その答えが、メディアに取り上げられるかどうかを、静かに分けているのかもしれません。

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