IT革命とAI革命、2つの転換点──機械が日本語を覚えてきた

人類の歴史を大きく変えた転換点は、6つあると言われることがあります。認知革命、農業革命、科学革命、産業革命、IT革命、そしてAI革命です。

何万年という時間の中で、革命と呼ばれるほどの転換は、数えるほどしかありません。そのうちの2つに、私は働いているあいだに立ち会っています。

今日は、IT革命とAI革命、2つの転換点の話をします。

数えるほどの転換点のうち、2つ

私が社会人になったのは、ちょうど「IT革命」という言葉が流行語になった2000年のころです。職場にパソコンが広がり、メールとインターネットが仕事のツールになっていく。その入り口に、新人として立っていました。

それから20年あまりがたち、40代の後半を迎えたところで、今度はAIの転換点が来ました。対話型のAIとして知られるChatGPTが一般に公開されたのは、2022年11月です。

一度も立ち会わずに一生を終えた人のほうが、ずっと多い転換点です。それに2度、しかもどちらも働いている時期に重なった。考えてみると不思議なめぐりあわせで、私は素直に、ありがたいと思っています。

正直に言えば、浮かれてばかりもいられません。新しいツールが出るたびに、自分はついていけるだろうかと、少し身構えます。それでも、この時代に働いていられるのは、運がいいと感じます。

一方で、山梨の会社では、AIはまだ始まったばかりです。帝国データバンク甲府支店が2026年3月に県内企業へ聞いた調査では、生成AIを「活用している」と答えた会社は34.9%でした(山梨日日新聞 2026年8月25日付)。3社に1社ほどです。

ニュースを見ていると、もう誰もが使いこなしているような気がしてきます。でも県内では、3社に2社ほどがまだこれからです。急ぐ理由はありません。

録画予約を、覚えていますか

2つの転換点は、どこが違うのか。私がいちばん大きいと思うのは、こちらが覚えるものの違いです。

ビデオデッキの録画予約を、覚えているでしょうか。チャンネルを合わせ、始まる時刻と終わる時刻を入れ、標準か3倍かを選ぶ。どこかで一つ間違えて、翌朝見たら別の番組が録れていた。そんな覚えのある人もいると思います。苦手な人は、家族に「日曜の夜9時のドラマ、録っておいて」と頼んでいました。

パソコンが職場に入ってきたときも、似たようなものでした。どの画面のどこを押すか。メニューの何番目に、目当ての機能があるか。仕事をする前に、まず機械の手順を覚えなければなりませんでした。

ITは、人が機械の言葉を覚えるツールでした。AIは、機械のほうが人の言葉を覚えてきたツールです。 AIへの頼み方は、ボタン操作より、家族に録画を頼むときの言い方に近いのです。

パソコンが入ってきたとき、苦労した人へ

あのころ、操作を覚えるのに苦労した人は少なくありません。社長自身がそうだった、という人もいるのではないでしょうか。

でも、仕事が分かっていなかったわけではないはずです。何を録りたいかは、はっきり分かっていた。つまずいたのは、ボタンの順番のほうでした。

AIには、ふだんの日本語で頼めます。「この送り状を、いつもより丁寧な言い方に直して」「今月まだ返事のないお客さんだけ、この表から抜き出して」。

パソコンでつまずいた人ほど、AIには入りやすい。 私はそう思っています。仕事の中身を知っていることが、そのまま頼む力になるからです。

パソコンを使いこなしてきた人へ

では、使いこなしてきた人の経験は、もう要らないのか。私は、そうは思いません。

録画を頼まれた家族が困るのは、「あれ、録っといて」とだけ言われたときです。どの番組の、何曜の何時からか。そこが分からなければ、どんなに機械に慣れた人でも録れません。AIも同じで、あいまいな頼み方には、あいまいな答えが返ってきます。

表計算で集計の仕組みを組んできた人は、仕事を「何を、どの順で、どこまで」に分けて考える癖が身についています。操作の知識は古くなっても、仕事を手順にして言葉にする力は古くなりません。

この二人は、組むこともできます。一人は仕事の中身を知っていて、もう一人はそれを手順の言葉にできる。パソコンの前では分かれがちだった二人が、今度は同じ机で話せます。

ツールが変わっても、残る声

私が携わった現場では、新しい仕組みが入るたびに、2種類の声が聞こえてきました。「操作が分からない」という声と、「仕事の流れがこう変わると困る」という声です。

1つ目の声は、ツールが良くなれば小さくなります。AIで、ずいぶん小さくなりました。けれど2つ目の声は、ツールだけでは片づきません。いつもの段取りのどこが変わるのか、最後に誰が確かめるのか。そこは、現場の人と話しながら決めていくしかありません。

私はこれまで現場で積んできた経験と、これから本格化するAIの知識を掛け合わせて、ツールだけでは解決できない現場の問題に向き合っていきたいと思っています。せっかく2度目の転換点に立ち会えたのだから、そこに自分の時間を使いたい。いまは、そう考えています。

まずは、録画を頼むように1つだけ

今週の仕事から、1つだけ選んでみてください。

パソコンが苦手だった人は、家族に録画を頼むくらいの言葉で、AIに頼んでみてください。返ってきたものが外れていたら、「もっと短く」「相手は年上の人」と一言足せば十分です。

使いこなしてきた人は、頼む前に、その仕事の手順を3行だけ書いてみてください。書いた3行をそのまま渡すと、答えの外れ方が変わります。

どちらの場合も、AIが作るのは下書きまで。送るか、出すかを決めるのは、人です。

最後に

今日の話をおさらいします。

  • 革命と呼ばれる転換点は数えるほど。そのうちの2つに、私たちは働きながら立ち会っている
  • ITは、人が機械の操作を覚えるツールだった。AIは、ふだんの言葉で頼めるツールになった
  • パソコンでつまずいた人ほど、AIには入りやすい。使いこなしてきた人の「仕事を手順にする力」は、そのまま効く
  • 県内でAIを使っている会社は、まだ3社に1社ほど

焦らなくていい。でも、始めるのに遅すぎることもありません。 同じ時代に働いている者どうし、2度目の転換点を、少し楽しみながら越えていけたらと思っています。

まずは、今週の仕事を1つ、ふだんの言葉でAIに頼んでみましょう。

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