「業務改善とDXって、何がちがうんですか?」
支援の現場で、よくいただく質問です。
たしかに、どちらも「仕事を良くする」話に聞こえます。言葉だけ聞くと、DXのほうが新しくて、すごそうな響きがあります。
では、何が違うのでしょうか。
今日は、100m走にたとえて考えてみます。
業務改善は、「走り方」を磨くこと
100m走で速くなりたいとき、まず何をするでしょうか。
フォームを直す。筋力をつける。スタートの反応を鍛える。
これが業務改善です。いまのやり方のまま、人と組織の力を最大限に引き出すこと。
たとえば、書類の置き場所を決める。二度手間になっている作業を一つにまとめる。朝の伝票入力の順番を見直す。
どれも地道ですが、確実に効果があります。多くの会社は、この「走り方を磨く」努力を続けてこられたはずです。
ただ、一つだけ限界があります。
どれだけ鍛えても、人が走る速さには限界がある、ということです。
現職でも同じでした。受注を電話やFAXで受け、担当者が受注簿へ記入する。そのやり方のままでは、どれだけ順番や分担を工夫しても、効率化には限界がありました。
では、自転車に乗ったらどうなるか
ここで、少し発想を変えてみます。
走るのをやめて、自転車に乗る。
同じ「移動」でも、道具を変えれば速さは大きく変わります。これがデジタル化です。
電話やFAXで受けていた注文をスマートフォンで受ける。紙の台帳を表計算ソフトへ置き換える。手段を変えるだけで、同じ仕事がぐっと軽くなることがあります。
ただし、道具を変えること自体が目的ではありません。
デジタル化は、仕事そのものを見直すための入口です。
そして、その先にもう一歩あります。
「そもそも、走る必要はあるのか?」という問いです。
移動そのものをなくせないか。会いに行く代わりに画面越しで話せないか。届ける代わりに、取りに来てもらう仕組みにできないか。
やり方を磨くのでも、道具を変えるのでもなく、仕事の前提そのものを見直す。
ここまで来ると、DXと呼ばれるものの姿が見えてきます。
現職で、実際にあったこと
現職では、電話とFAXで受けていた注文をLINEへ切り替えました。
きっかけは、毎朝の伝票入力です。走り方をどれだけ工夫しても、減らせる時間には限界がありました。そこで、受注方法そのものを変えることにしました。
結果として、約1,500社の取引先のうち、およそ3分の2にあたる約1,000社がLINE注文へ移行しました。毎朝の入力作業は約30分短縮され、事務作業は実質1人分削減できました。
もちろん、最初から順調だったわけではありません。新しいやり方に戸惑う声もありました。
それでも、使い続けるうちに聞き間違いや入力ミスが減り、お客様にも現場にも定着していきました。
「もっと頑張る」ではなく、「やり方そのものを変える」。
その違いが生んだ変化でした。
全部、正解です
ここまで読むと、「うちも走るのをやめなければいけないのか」と感じるかもしれません。
そうではありません。
フォームを磨くのも、自転車に乗るのも、走ること自体を見直すのも、全部正解です。
大切なのは、自社が今どこにいて、次にどの一歩を選ぶかです。
私は、最初から自転車をお勧めしたいわけではありません。
現場を見て、「まずはフォームを整えましょう」とお伝えすることもあります。実際、「Excelで十分ですね」という場面は少なくありません。
一方で、走り方をどれだけ工夫しても解決しない詰まりを、根性だけで乗り切ろうとしていることもあります。そんなときだけ、「一度、自転車を試してみませんか」とご提案しています。
順番と現在地。それさえ分かれば、DXは怖いものではありません。
最初の一歩は、現在地を知ること
100m走の選手は、自分のタイムを知っています。
でも会社の仕事は、意外と測られていません。
どこに時間がかかっているのか。誰が何を抱えているのか。走り方の問題なのか、道具の問題なのか。それとも、そもそも走る必要がないのか。
まずは、それを一枚の紙に見える化するところから。
やまなし DX Naviの無料「業務の見える化診断」は、その現在地を一緒に確かめるためのものです。フォームを整えるべきか、自転車を試すべきか。現在地が分かるだけで、次の一歩は軽くなります。
DXとは、速く走ることではありません。
「今の仕事を、もっと自然に進められる方法はないか」と、問い直すことです。